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名脇役

A Sideman's Journey
by Voorman & Friends

ビートルズのRevolverのジャケットデザインを担当したことでも有名なKlaus Voormanが初めて(!)発表したリーダー作。Manfred Mannのベーシストとして、またビートルズのメンバーのソロ作(ImagineやAll Things Must Passなど)などにも参加している彼が、これまでソロ作を出していなかったというのにも驚かされるが、今作は期待を裏切らない素晴らしい出来栄えだ。

何よりもまず特筆すべきは参加ミュージシャンの顔ぶれだ。Ringo Starr, Paul McCartney, Joe Walsh, Dr. John, The Manfreds (Manfred Mannのメンバー), Bonnie Bramlett, Jim Keltner, Van Dyke Parksなどなどとビートルズファンなら思わずニヤニヤしてしまうような何とも素晴らしい人選だ。クラウスがいかに名脇役だったかを表しているとでも言えようか。一曲目の"I'm in Love Again"はクラウスがベースを弾き、リンゴがドラム、それ以外の楽器をポールと恐らく現時点で最もビートルズに近いメンバーでレコーディングされているのではないのだろうか。

また、そのつながりでいえば、"All Things Must Pass"、"My Sweet Lord"、"The Day the World Gets' Round"と3曲もジョージの曲を取り上げているというのもうれしいところ。ジョージとクラウスの関係の深さをうかがい知ることができる。特にバングラデシュ・コンサート賛歌の"The Day the World Gets' Round"が入っているところに、選曲の妙が表れている気がしてならない。

全体的にいえば、上記のジョージの3曲やThe ManfredsによるManfred Mannのヒット曲(作曲はBob Dylan)の再演、"Mighty Quinn"がやはり聴きどころだろうが、個人的にはドイツの若き歌手Max Buskohlをフューチャーした"You're Sixteen"がお気に入りだ。ジャムセッションの楽しさをそのまま表現したような、生き生きとしたトラック。そこからDr. Johnが"Such a Night"でしめるという流れも渋くてかっこいい。

かつて若かったおじ(い)さん達が、その若さを失わずにセッションを十二分に楽しんでいる。聴いているこちらまでその楽しさが伝わってくるようで、こんな素敵に年をとれたらいいのになあと思わせてくれる名盤だ。ジョージが生きていたら、参加したかっただろうなあ。

2010年3月14日

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