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Happy Birthday, Brian!

(ブライアン・ウィルソン64歳の誕生日に寄せて)

今日はthe Beach Boysのリーダー、ブライアン・ウィルソンのお誕生日(1942年6月20日生まれ)。

ブライアン・ウィルソンはビーチボーイズのデビュー以来、その卓越した音楽的才能により作曲、アレンジ、プロデュースなどを通じてグループを主導し、ナンバーワン・アメリカン・バンドの地位まで引き上げた立役者である(Fun Fun FunやI Get Aroundなどはこの時期の代表曲)。

しかしサーフィンと車というカリフォルニアの若者文化を歌うことでいわば「アメリカの夢」を独創的なサウンドで表現したブライアンのその後の人生は、その夢が幻想でしかないことを示していく。いや、そもそもビーチボーイズの本物のサーファーが一人しかおらず、リーダーのブライアンが泳げないという事実はすでに何かを暗示していたということができるのかもしれない。

ヒット曲を追い求めるレコード会社とマネージャー役の父親、マーレー・ウィルソン(資本主義と家父長制!)からの重圧により、彼の精神は徐々に追い詰められていった。

1964年、ハードスケジュールに耐えかね彼の精神は破綻をきたす。その後はツアーから遠ざかりレコーディングに専念。

1966年にビートルズの『ラバー・ソウル』(ただしアメリカ盤)にインスパイアされる形で自らの内面に踏み込んだ60年代のマスター・ピース『ペット・サウンズ』を発表。

それはブライアンの音楽的天才の結晶であると同時に、一人の内気な青年の内面を余す所なく描き出したブライアン自身のセルフ・ポートレイトであるといえよう。

しかしそれがレコード会社の無理解から多くのファンの受け入れるところとならなかったことに衝撃を受け、さらに内向的な幻の作品『スマイル』の製作に突入し挫折。ついには精神に異常をきたしてしまう。

その後、長い低迷期を経て、1988年、初のソロアルバム『ブライアン・ウィルソン』でついに完全復活。現在では精力的な活動を行なっているようである。

まさにアメリカの陽と陰を一身に表現しているような天才、ブライアン・ウィルソン。

今日、一日は静かに彼の誕生日を祝いたい。

Pet Sounds [from UK] [Import]

2006年6月20日

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